大乱闘スマッシュブラザーズDX(スマデラ)
任天堂のゲーム機「ゲームキューブ(GC)」を2001年12月に買ってから自分が初めて遊んだゲームがこの「大乱闘スマッシュブラザーズDX」である。題名が長いので「スマデラ」とか「スマブラDX」といった略称で呼ばれている。任天堂の旧ゲーム機であるNINTENDO64において好評を博し、ジワジワと人気を獲得していった「ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ」の続編として有名。 自分は「前作の異常な評判の高さ」と「他に自分の遊べそうなGCソフトがない」という2点の理由から、このゲームを買う事にした。(マリオサンシャインやゼルダの伝説が発売されていたらたぶんスマデラは買っていなかった。) 初めて遊んでみて思ったのは、「低年齢向けのゲームの割にキャラの動きが素早いなー」という事。ゲーム慣れしていない人だと自分の操作しているキャラを見失いかねないくらいに、スゴイ速さでキャラが動き回る。たぶん年配のお爺さんお婆さんはゲーム画面で何が起きているのかあまりに速くて理解できないと思う。 このゲームは遊んでいるうちに絶対「動体視力(目でモノを素早く追う能力)」が鍛えられる。このゲームを遊んでおけば、もし道端で突然包丁を突き付けられても反射的に交わせやしないかと思ったりする。(いや、ワカラナイけど。) 自分は長らく、動作のゆったりした目の疲れないゲームばかり遊んでいたので、スマデラの激しいキャラの動きには少し面食らった。とはいえ、1プレイが20分(慣れれば10分)程度だし、合間に目を休める事ができるので、それほどストレスを感じずに済んだ。もし「緊張状態(集中している状態)」を長時間強制するようなゲームだったらすぐにイヤになっていたと思うが、決して強制されなかったので心地良く遊ぶ事ができた。 スマデラは一種の格闘ゲームなのだけど、あまり複雑な操作は必要なく、ゲームをあまり遊ばない人、特に従来の格闘ゲームは意味不明で操作できないというタイプの人に遊びやすい仕組になっている。 簡単に操作できるからといって底が浅いゲームというわけでもない。一見単純に見えるので、「ガチャガチャテキトーにボタン押してても勝てるじゃん」「単純でツマラナイ」と言われがちだが、実際はなかなか奥が深く、最初はメチャクチャな操作で遊んでいてもだんだん慣れてくると普通の格闘ゲームのように体系的な戦略を心得るようになってきて、腕の上達を感じ取る事ができる。自分も少しずつ上手くなって、昔はとても勝てなかった敵に対して今では平気で勝てるようになったり、ムダな動きを省いてスマートに戦えるようになったりして、そうした「腕の上達」を見込める「確かな作り」はさすがだと感じた。これがもし上達のまったく見込めないゲームであれば三流ゲームで終わっていたと思う。 スマデラは「初心者向けでもありマニア向けでもある非常に窓口の広いゲーム」で、ゲームとして理想の形といえる。大抵のゲームは、「初心者向けであればマニアには物足りない」「マニア向けであれば初心者には意味不明」という対立の構図が成り立つので、初心者向けでもマニア向けでもあるこのゲームが売れるのは、非常に理解できるところ。 「初心者向け」というのは、正しくいうと(このゲームに関しては)「子供向け」という意味でもある。スマデラのイメージ自体がすでに「子供向けのゲーム」として浸透していて、実際自分も、「子供向けだし自分には合わないかもしれないなぁ」と少し不安になりつつこのゲームを買ってみたわけだが、遊んでみると、「じゅうぶん大人でも遊べるじゃん」と思える水準を満たしていて、ずいぶんと安心させられた。 この「大人でも遊べるじゃん」というのが「マニア向けでもある」というのに通じるところがあると思う。子供だけでなく大人でもじゅうぶん楽しめるという事は、「子供向けのゲームだからといって子供をバカにしたようなゲームを作っていない」という事でもあると思う。 自分は常日頃、「ゲームにはゲーム製作者の性格や感性が表れる」と思っているのだけど、こういう「子供向けのゲームでも子供をあなどらず非常に丁寧に作ってあるゲーム」に触れると、製作者の人柄の良さが伝わってきてすがすがしい気持ちになれる。テレビゲームの中には「遊び手をバカにしたような」「ただの自己満足な」「こんなものによく5000円以上もの金を払わせるなー」と思わせるゲームが多く、そういうのは製作者の性格の悪さがにじんでいる気がして、とても嫌気がさしてくる。 このゲームは子供に安心して遊ばせる事のできる内容であるし、大人でも決して楽しめなくない内容で、そのボリューム、やり込み要素の多さは、他のゲームの追随を許さないくらい、やり込もうと思えば2、3ヶ月は間違いなく遊べる。いろんなゲームモードの他に、ゲーム中でゲットするフィギュア(人形)を鑑賞するモードがあり、フィギュア収集にかなりアツクなれる。 このフィギュアの出来が特筆すべきもので、自分はノンビリと眺めてかなり楽しませてもらっている。自分はもともと「収集」といった行為が好きな人間なので、フィギュアがちょこちょこ増える度にちょこちょこ眺めて、1つ1つのフィギュアの出来の良さに感心しまくっていた。実物のフィギュアと違いコンピューターグラフィックならではの美しいフィギュアで、部屋の場所を取らないし、お金もかからないし、フィギュアを楽しむのに最高の環境をココに用意してもらったという心持ちがした。 はっきり言ってこの「フィギュア収集」にだけ特化したゲームを作っても楽しい気がする。ポケモンもこれくらいの、もしくはこれ以上のグラフィックで描いてくれたら収集のしがいがあると思ったし、実物のフィギュアやトレーディングカードと違って部屋の場所を取らず、汚れて台無しになる事もなく、とても魅力的に感じた。トレーディングカードなどは丁寧に扱わないとカードの四隅が丸まったりして価値が下がるし、なんだかそういう煩わしい作業が多いので、テレビゲームで気楽にバーチャルな収集をして、さらにその収集物を交換したり対戦できたりすればそりゃ楽しい。 まぁそれは「ポケモン」が実現している事ではあるのだが、ポケモンはだいぶ消費し尽くされて飽きられてしまっているので、新しい、もっと魅力的な「何か」を作る必要があると思う。ポケモンのシステムを継承してポケモン以上に魅力的なキャラクターの登場するテレビゲームが期待される。 スマデラの話に戻す。 先にも書いたようにこのゲームはマニア向けな一面があり、戦略を練ったり操作技術を訓練したり、そういった普通の格闘ゲームのような要素も多分に秘めている。上手い人は天才的な上手さを発揮して尊敬される。とはいえ、下手な人が一方的にやられてツマラナイ思いをしないようにもなっていて、このゲームバランスの「妙」には驚かされる。 遊んですぐ気付くが、かなり「爽快感」もある。必殺の攻撃で敵をふっとばすとスゴイいきおいでふっとんでいく。普通の格闘ゲームと比べたら派手な演出が満載で、たとえるならメロンをスプーンで山盛りにけずって食べるような楽しさがある。 このゲームは結果として100万本以上も売れた。100万本以上売れた理由としてはゲームキューブに他に面白そうなソフトが少なかった事、前作の評判が良かった事、幅広い層の楽しめるゲームである事、とんでもないボリュームである事、などなど、複数のプラス要因があげられると思う。人によってはゲームキューブでいきなり100万本以上も売れた事に対して訝る向きもあるが、自分のやってみた感想としてはまぁ納得できるものかと思う。 多人数での対戦を主な目的としたゲームではあるけど、1人で遊んでもじゅうぶん楽しめる。「一緒に遊ぶ人がいないから買うのを迷っている」という人はそれほど心配しなくて良い。自分の思うこのゲームの最大の弱点は「キャラクターの認知度」で、過去の任天堂ゲームに登場した人気キャラが総出演しているとはいえ、はっきりいって人によって「どうでも良い」とか「興味もてない」とか「好きなキャラがいない」といった事が平気で起こりうるラインナップかと思う。自分も正直言って知らないキャラや魅力的に思えないキャラがいる。任天堂をけっこう好きな自分でもそうなのだから、任天堂を特に好きでも嫌いでもない人は尚更キャラクターに対して魅力を感じないと思う。「どうしてもキャラクターが許せない」という人は買わないほうが良い。それは当然の話。 しかし、これだけまったく異なるキャラクター達をバランス良く調えて1つのゲームに出演させるというのは並々ならぬ労力と努力があったと思う。本当に拍手を送りたい完成度。これ以上の完成度の作品は想像つかないし、続編はちょっとムリというか出したくても出せない気がするのは自分だけだろうか。 ここからあまり関係ない話を。 自分はこのゲームをキッカケにして2ちゃんねる(2ch)がどこよりも情報が速いという事を知った。このゲームの最新情報のすべてが2chから発信されていると言っても過言でなかった。これはスマデラに限らず他のゲームにもいえる話みたいで、なぜか2chはどこよりも速く、どこよりも多い情報が集まってきていた。しかもこのスマデラに関しては、かなりの腕前を持つ人達が2chに集まっていて、あらゆるモードの極限のハイスコアを目指してヒートアップしていた。自分は2chの独特なノリについていけなくて1度も書き込まなかったし、今でも2chのフンイキはあまり好きではないのだけど、その圧倒的な情報量に対してはかなり驚かされて敬服した。あのノリには(失礼だけど)一昔前のガングロ女子高生を見るような違和感を覚えたりするのだけど、見た目の文章はともかく、中身は本物なので、その点には本当に感心している。でもガングロ女子高生と一緒で直視しづらいから、これからも2chはたまに見る程度になると思う。 参考:スマブラDXの公式ページ←ゲームと同様ボリュームがスゴイ。 参考:Tidal Beachのスマデラレビュー←秀逸なレビュー。納得です。 ('02年05月31日制作) |