真っ暗な脳に白ポチがヒトツ
「無題」
世田谷区の住民が一人残らず眠っている数秒間が 二十年に一度ある。
世田谷区で 起きている人は一人もいない。
人も通らない。
道路には 車が一台もいない。
その薄暗い道を、
人っ子一人通らぬ夜の道を、
靴音高く 走り抜ける男がいた。
笑い声を高らかに上げながら。
彼は この二十年間 このわずか数秒を じっと待ち続けていたのだ。
男が消えた。
誰かが 目を覚ましたのだ。
(朝倉泉・中学三年のノートより)
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